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【イェール大学の成田悠輔先生セミナーより③】教育関連のお悩みに回答! 英語教育はマスト? 不登校への対応は? ギフテッドの留学は?

Edu.tor主催、イェール大学の成田悠輔先生によるオンラインセミナー『イェール大学准教授成田氏が語る。エリート校、偏差値による学校選びの行く末は?~日米教育の比較から「子どもの教育、学校選択」の時に考えるべきこと。with Edu.torチューター』から、引き続き質疑応答の内容をQ&A形式でお届けします。【成田先生セミナー記事①はこちら】【成田先生セミナー記事②はこちら

Q.学歴と幸せに因果関係はないのでは、ということでしたが、影響がありそうなファクターは?

A.アメリカに関しては、有名な学校とそうでもない普通の学校を比べるとあんまり差がなさそうだということは分かってきています。【前々回の記事ご参照】ただ、効果がある場合というのも、あるようです。

例えば、具体的には「少人数学級」です。特に小学生や中学生ぐらいですと、クラスに何人の子がいるかということが、そのクラスにいる人たちの学力に影響を与えていそうだというのが分かっています。

さらに「先生によって違いがある」ということも分かっていて、アメリカだとそれぞれの先生が生徒の学力に与えている効果を測っています。そのデータから先生たちの効き目とか質みたいなものを公開したり、人事に使ったりということが広く行われているんです。学校の違いよりも先生の違いのほうが重要そうです。

それから3つ目としては、有名か無名かという違いではなく、「学校のタイプの違い」です。 例えば公立の学校と、社会起業家の人たちが始めたようなタイプの民間の人たちが運営してる公立学校みたいなものがあります。チャータースクールといわれる学校で、日本でもいくつかでき始めているものです。普通の学校に比べて、チャータースクールは特に都市部では効果がある場合が多い、みたいなことが出てきています。 

 

Q.アジアやヨーロッパでも「学歴は効き目がない」のでしょうか?

A.アメリカ以外の国についてはもうちょっと複雑だということが分かっています。ヨーロッパや南米での研究ですと、エリート高校に効果がある場合があると知られています。

僕自身も、日本で測ったことがあります。日本では今の国立大学の前身のような、旧制高校というものがありますよね。そこに通った人たちにとっては、学校が将来の人生に与えた影響があるようなんです。

ですので、「アメリカについてはエリート学校の効果はあんまりないかもしれない、けれども、他の国についてはあるかもしれない」というのが分かっていることです。

 

Q.大人の自分でもYouTubeなどの動画コンテンツ視聴時に、英語のほうが情報が多いなと利点を感じます。子どもたちには、より英語の必要性があるでしょうか?

そうでもなくなっていく、という気がしています。というのは今でもYouTubeの自動翻訳の日本語字幕など、そこそこ使えますし、大体意味が分かるものが多いですよね。 特に元々のコンテンツがしっかり作られていて滑舌が良かったりする場合は、結構ちゃんと翻訳されて文字起こしができています。 

今後はおそらく、動画コンテンツにおける言語の壁みたいなものはどんどん低くなっていくんじゃないでしょうか。実際、韓国人YouTuberが10か国語ぐらい字幕をつけてコンテンツを作っていて、フォロワー数千万人みたいな人がいます。そのような感じで英語が身についてないとコンテンツにアクセスできないという時代は終わりつつあります。

しかし、身につけるとしたらどうすればいいか、ということだと思いますが、僕は今後はもう2つの路線にはっきり別れる、というより2択を迫った方がいいと思っています。自動翻訳やディープ Lで対応できないようなレベルの、「本当の多言語とか外国語を身につけるというふうに覚悟を決める人たち」と「そうじゃない人たち」に分けたほうがいいです。

英語がそんなに重要じゃない、もしくは、そんなに覚悟は決められない人たちにとっては、もう自動翻訳で対応できる範囲にして、それ以上のことは目指さないのがコスパがいいのではないでしょうか。できるだけ早く子供の段階から学びまくって、その言語を完全に自分の中に染み付いたものにするか、あるいはもう言語は機械に委ねてしまうか……その2択かもしれません。

 

Q.学生時代を思い返すと登校が辛い時期があったのですが、学費のことなどを考えて無理に通っていた経験があります。成田先生ご自身は不登校の時期にそういったことへの気遣いなどありましたでしょうか? また、子どもへの気遣いについては?

A.僕の場合は不登校のときのことをあまり覚えていないんですが、眠すぎてそれどころじゃなかった感じです。他の人も「無理に登校する必要はないんじゃないか」と思っています。やっぱり人間、合わないところに頑張って通ったりすると本当に心とか体とか簡単に壊れるものだと思うからです。

学校だけでなく、会社でも無理のあるところに通い続けて実際に体や心が壊れちゃう人はたくさんいるわけですよね。そうなったとき単純にコスパだけ考えても、全然行く気が起きないところや、むしろ行こうとすると鳥肌が立っちゃうようなところには全然行かなくていい、という考え方が皆に染みつけば、という気はします。そういう気遣いは不要だと、皆で思えるようにしていったほうがいいのではないかと思っています。

 

A.成田先生は学校から離脱された時期がありますが、そのときに独学で意識されていた方法論はありますか?

方法論、あるいは効率性を考えると広がりがなくなる部分があると思っています。ですので方法論を意識しない時期があったほうがいいと思っています。無駄があることをやり続ける時期や、あとから見ると笑っちゃうようなものに手を出していたり、「非効率な方法で何かを学んでいったりしながら吸収していた時期があってもいい」という気がしています。

「いろんな技術とかコンテンツとかを駆使して効率化を図っていくような独学」と「全くそういう方法論みたいなものにとらわれないでその場のノリで好きなように好きなことを吸収していく方法」と両方あっていいのではないでしょうか。

 また、それぞれの個人が持っているノウハウや、特定の先生が持ってるすごいノウハウみたいなものはあるかもしれないですが、組織とか学校みたいなものにはないと思います。教育も今後はどんどん個人が担うようになっていって、教育に占める個人の役割が高まっていくんじゃないかなという気がします。

今はとてつもない授業をやる能力がある人が、全世界に配信できてしまうので、ある意味で学校に支えられている、あんまり必要じゃない先生みたいな役割がどんどん減っていくと思うんです。どこかにいる「すごい先生個人の秘密を探るのが良い」と考えています。

 

A.子どもにギフテッドの傾向がありますが、生活力が低く将来の一人暮らしが心配です。アメリカなどの学校のほうが日本よりのびのびできるのでは、と考えていますが、不安要素があっても留学させたほうがいいと思われますか?

留学するとバラ色というのは、多くの場合、間違いかもしれないと思っています。やはりどんな国もどんな教育制度も、良いところと悪いところがあります。

アメリカと聞くと、のびのびできるとか、多様な人たちを受け入れる力がある、みたいにイメージしがちです。しかしそれも、アメリカのどこに行くかや、どういう人が受け入れてくれるかによって全く千差万別なので、 留学とかアメリカみたいなものを自己目的化して、そこにいきなり突撃してしまうと予想外の 良くないことが起きる可能性も大いにあるんじゃないかなと思います。「日本で行き詰まったときの逃げ口として、留学を確保しておく」というのがいいのではないでしょうか。 

 

最近はChat GPTをはじめAI活用が本格化、自動翻訳もレベルが上がり、活用場面が増えています。そんな中で子どもの英語学習をどう考えるか、今ではなく10年後を見据えた回答を頂いた気がします。
また、「少人数制」「先生による違い」「学校のタイプ」の3項目は、学歴や幸せへの影響がありそうとのことでした。学校選びの参考になる方も多いのではないでしょうか。(Edu.torセミナー担当者)

 

構成・文/小川のぞみEdu.tor編集部

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