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【かえつ有明中・高】進化し続ける教育が魅力! 生徒たちの幸せを追求する方法とは?

かえつ有明中・高等学校」が国際生と呼ぶ、いわゆる帰国生たちの多くが一度は受験を検討するほどの人気校である同校。Edu.torスタッフが取材したのは、グローバル教育の特徴や国際生の話をはじめ、一般生との交流による化学反応、高校募集を続ける意義などです。受験をお考えのご家庭は、ぜひご一読ください。

 

―貴校のグローバル教育とは?その意義とは?

グローバルという言葉は、基本的にはビジネスから出てきた言葉だと思います。しかし教育の立場で「グローバルという意味は何だろう」と考えると、「いろんな人と手を取り合ってやっていくこと」ではないかと思っています。学校でも、卒業して社会に出てからでも、同じことがいえるかもしれません。

本校は帰国生の割合が全体の25%以上ですが、帰国生クラスをあえて作っていません。全クラスで帰国生と一般生が混ざり合っています。また、外国人の教員はもちろんのこと、教員自身が帰国生だったり、自分の子どもが帰国生だったり、家族に外国人がいたりする教員が多くいますので、海外というものがとても身近ですし、英語がすぐそこにある環境です。

だからこそ、この学校の中で行われている教育全体が、すでにグローバル教育なのではないかと思っています。帰国生がいるからグローバル、というだけではなく、「様々な価値観を持っている教員や子どもたちがいる」ということがグローバルと言えるのではないでしょうか。言語が違う、価値観が違う、国籍が違うーーそこから議論が起こります。単に海外と繋がっているとか、英語を話せるとかではなくて、この環境そのものがグローバルではないかと考えています。英語で話すときだけでなく、日本語で話すときにも起こっているのが特徴です。

 

―どのような教育を目指していますか? どんな卒業生にしたいでしょうか?

「子どもたちが幸せな未来を自分たちで切り開いていけるように」と考えています。そのために重要なのは、どうやって具体的に生徒が行動に移していくか、です。まずは学校で人と繋がりながら、自分がコンフォタブルになること。そして次に、そこから抜け出してアンコンフォタブルなことをもコンフォタブルに変えていってほしいと思っています。

そのために、まずは教員自らマインドフルネスを学び、自分の心を落ち着かせる研修に参加しています。心にフォーカスを当てながら、子どもたちが居やすい環境、子どもたちが自分の意見を言いやすい環境作りにチャレンジしています。それは新しい発想を出しやすい環境でもあります。

子どもたちには幸せになってほしいので、「社会に貢献する」前に「世界に出ていくわけだから、まずは自分にどれだけ貢献できるか」も大切です。自分がどれだけ幸せになれるかを常に追い求めることができる大人になってほしいと思います。卒業生はよく、生徒のためにチューターとしてサポートしてくれたり、教員に相談があるといって来校する子もたくさんいて嬉しく思っています。

 

―貴校ならではの強みは何でしょうか?

教員の素晴らしさです。教員自ら「なぜここにいるのか」をしっかりと意識して、授業を良くするためにはどうすればいいかを勉強しています。若い教員たちが特に積極的に学び合っています。私自身は50代ですが、若い教員たちから刺激を受けることも多いです。

また、英語教育に関してですが、英語は言語教育というだけでなく、教員が心を開いて、何を言っても大丈夫だという環境を作ることが大事だという共通認識を持っています。言葉を操るには、話したいというモチベーションがないと、偽物の言葉になってしまうものです。パターンプラクティスを行うことは基本ではありますが、そこに心を込めてお話しようよと言ってもなかなか難しいことです。自分の思っていることを言葉にのせる、という場面を作ることが教員には必要だと思っています。過去のやり方にしがみついていては、機械的な授業に陥りがちだと考えているからです。

 

―どんな生徒さんが多いですか?

大体4割が女子で6割が男子。擦れてない、屈託のない明るい子ばかりです。どちらかというと、素直に物を言う子が多い印象です。物静かな子もいますが、男女ともに、あっけらかんとしています。もちろん、いろんなタイプの子がいていいよ、ときちんと言語化しています。

また、本校は自由度が高いので、生徒たちは勉強をすぐに教え合う姿が見られます。教員も、分からないところがあったら周りに聞いてね、と言います。ここが肝ですが、どこまで子どもたちに任せられるかということ。ここは怖い点でもありますが、任せて支えることがポイントで、放置とは違います。号令をかけながら統率するという発想を捨ててからやっと、「任せる」と言うことができます。

例えば行事がある時に、事前に注意しておくということがあると思うのですが、生徒はやってはいけないことなんて、もちろん知っているんです。それでも禁止されていることをしてしまうこともあります。しかしながら、だからといって先に注意しておくのではなく、生徒がやってしまったという時に、「なぜしてしまったのか」「これからどうすればいいのか」を考えさせればいいと思っています。

教員は、叱ると仕事をした気持ちになりますが、本校では教員が内省をして、管理とは違う形でどういう指導をすればいいかを考えていくようにしています。本校の教員たちは、「教育を、日本をどうしたらいいのか」「子どもたちを幸せにできるだろうか」ということに対して真剣に考えています。

図書室ドルフィンにて。取材時にも先生と学校の雰囲気の良さが伝わってきました

 

 

―貴校は帰国生教育と探究型学習に強みがあると思います。子どもたちはこの学びを経て、どのように変容していきますか?

とにかく子どもたちはよくしゃべるようになります。高校2年生くらいにもなると、「ハピネスって何だろう」と質問をしたら、一気にずっと話してくれます。「意見を言って」と言えば言いますし、反論もするし、いくらでも話してくれます。

高校の新クラス(注:クラス名。半数が高校からの入学者からなる)では、高校から入学した生徒が、クラスメイトの活発に意見を言う姿を見て、今までの生徒像にないとギャップを感じるようです。最初は「どうしたらいいんだろう」と戸惑っている姿が見られます。しかし、そんな状態も、「喋り方・ブレストの仕方・スパイダーウェブディスカッション・哲学授業」などのトレーニングを通して、当たり前に話せるようになっていきます。人の話は遮らない、批判しないことも伝えるので、聞くのも上手になります。

※詳しくはHPへ:https://www.ariake.kaetsu.ac.jp/education/program/

 

―帰国生が25%いる中で、一般受験をしてきた子どもたちは、どんなふうに変わっていきますか?

一般生にとって帰国生との触れ合いはカルチャーショックのようです。通常、帰国生が少数だと、帰国生同士でも普段からペラペラと英語で話すということはしないと思います。日本では同質性を壊すということで排除されがちだからかもしれません。しかしながら、本校ですと普通に話せる状況にあるので、英語を話す帰国生がいるのは日常です。

過去には、学年によってはトラブルが起こって、「分かるように話してほしい」と一般生が言ったり、帰国生が英語で話していると「悪口を言われているんじゃないか」と感じることもあったようでした。そんな時は議論の後に、「それは言葉が違うというだけで、人を差別・区別しているよ」という話をしました。英語を話す時間を大切にするのもいいこと、分からないことは日本語で話すのも大事なこと、と両者でコンセンサスを取りました。しばらくすると当たり前になっていくのですが。

帰国生はまた、立ち振る舞いが異なる場合もあります。滞在国の文化背景や受けたトレーニングの違いがあるからです。例えば授業中に飲み物を飲み出したりもしますが、日本ではダメなことを知らないだけであって、「彼は帰国生だからか」「どうして飲んだらダメなの?」みたいな会話から盛り上がることもあります。

一般生か帰国生かに関わらず、本校では、「発言するというトレーニング」をきちんとしていくので、いつからか、帰国生ってかっこいいな、という対象に変わります。そのため、言語以外の刺激も知らない間にたくさん受けていると思います。少しの衝突はどんどんやっていけばいいと見守ることにしています。それによる小さな変化はいつでも起こっています。

 

 ―「高校新クラス」と呼ばれるコースのある高校入試ですが、続けていきますか?

高校入試は続けていく予定です。新クラスでは、大学の一般受験に向けた対応を積極的に取らないカリキュラムのため、「新クラスへの受験をどうしよう」と思われる保護者もいらっしゃると思います。結果としては、お子さんが学校説明会の体験授業に出て、絶対にここに行きたいと受験されるパターンが多いです。私たちが行っている教育に関して大きく注目はしていても、保護者の方にとっては実態が掴みにくいのでしょう。ただ、これこそやってほしい教育だとおっしゃる保護者もいらっしゃいます。

学校としては、進学も含めて色々と考えており、自信もあります。こんな授業をやりたいと教員が考えてきたりと、パワーがあります。教員の話が面白く、目の付けどころがいいと私自身感じます。深く勉強をしてきているので、教員と生徒がお互いに刺激をし合える環境です。対話の時間が多く、素を出せる授業ですので、その時間の中から気がつくことは多いと思います。ただしその分、座学は家でやることになっています。例えば、英語であれば文法的なことや演習問題は課題として出し、授業では「なぜhaveなんだろうね」と本質を問うような学びを行っています。

もう一つの特徴としては、そこに英語ではないとキャッチできないようなニュアンスを持ってきて、価値観を議論したりします。例えばディスクリミネーションについて議論を重ねた後、スライドを作って発表してもらい、ディスカッションをします。その結果、高1のときは英語を喋れなかった子が、卒業時にはすごいスピーチができるようになっていきます。

※詳しくはHPへ:https://www.ariake.kaetsu.ac.jp/education/class/

 

取材日/2022年11月10日

対談者/かえつ有明中・高等学校国際部部長 山田英雄 先生 

取材・文/神戸鉄郎松田裕見Edu.tor編集部

編集・文/小川のぞみEdu.tor編集部

 

編集後記(神戸)

東京オリンピック、パラリンピックで盛り上がった湾岸地区にほど近い、かえつ有明中学・高等学校。帰国生の割合が約25%ほどで、帰国生が伸び伸びと学校生活を送れる学校だと感じました。部活動にも一生懸命で、取材時にもバトントワリング部の生徒さんたちが練習していました。山田先生が「我々の売りは、教員です」とおっしゃっていたのが印象的でした。湾岸地区の発展と同様、それ以上に伸長するかえつの子どもたちの成長が楽しみです。

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